トップ > 「小田垣塾」に込めた思い

「小田垣塾」に込めた思い。

小田垣 邦道 プロフィール
1951年生まれ 兵庫県立姫路工業大学(現兵庫県立大学)卒業 (株)本田技術研究所に入社し、数々の車の開発に携わった後、取締役副社長として四輪開発を統括。
2008年、(株)ケーヒンの代表取締役社長に就任。(社)経団連理事、(社)自動車技術会フェローなどを兼務し、2011年退任。
2012年、東京21世紀クラブ会員となり後進の指導にあたっている。2015年、大阪(株)ドゥカラーズにて「小田垣塾」を開塾。
羽利
本日は、小田垣さんに「小田垣塾」についての思いやお考えについて、お話をお聞きしたいと思います。
私は、近年働く人の意識や価値観が変わってきたように思います。自分の仕事に誇りやプライド、使命感を持っている人が少なくなっているように感じます。
誇りや使命感を感じるまでには段階があって、はじめは「自分を他の人以上に認めてもらいたい」といった、承認の欲求や力の欲求を満たすために頑張る。それがある程度満たされるようになったら、より強く「自分が関わったことで会社に貢献したい、お客様に喜んでもらいたい」という使命感に変わっていく・・・。
今私が感じるのは、そうならない人の方が多くなってきていると。ただ単に、労働として自分が与えられた仕事を期日通りにやるとか…
小田垣
そこに自分の思いも、自分が存在した理由も考えないという事ですよね。言われたことを言われたままにやっている、機械の歯車みたいな。
羽利
そこに疑問を感じない人が多いといいましょうか…
小田垣
多いと思うよ。もともと日本人の六割くらいの人がそういう特性を遺伝子学的に持っているみたいだから。それはそれで否定はしない。要は幸せかどうかなんだから。
ただ、「本当にこのままでいいのかな?」と感じはじめた人は、自分を押し殺したままでなんとなく不完全燃焼で仕事を続けるのはあんまりにももったいないし自分の心が満足しない。

僕はどちらかというと、「これでいいのかな」と感じてる、そういう人と巡り合うようになっているんだろうね。東京で今まで五つのグループと付き合っていて、羽利さんのところでもやらせてもらって、やっぱりみんな「本当はどうあるべきなんだろう?」と自分に問うている。それを押し殺して日々生きて、酒飲み話で上司の悪口を言って気晴らししてるような人生はつまらないよ。

「したいんだったらすれば?」「したいんだったらしようよ」「その方が面白いよ」って言いたい。

「これでいいのかな」っていう思い、「会社はどうあるべきか」「自分はどうあるべきか」、「そのどうあるべきに対して今は出来ているのか出来ていないのか」「出来ていないとしたらなぜだろう」、その理由を考える。自分が本当にしたいことが見つかったらそのためにどうしたら実現できるようになるか、そのためには「こう考えたほうがいいんじゃない?」「こういう習慣を身につけた方がいいんじゃない?」って、そういうことを僕は説いてるわけ。ゼミに参加しようっていう人はそういう思いがあるから参加してるわけでしょ。

それと、人の上に立ったら、必ず考えてもらいたいね。何人かでも部下を持ったら、会社の事や自分の生き様みたいなことを決めないと。「どう生きるんだ」と。

リーダーになったら「上から言われてるからこうする」っていうのはできるだけ言って欲しくない。「自分はこう考えてみんなと進めてきたけれど、上司からこういう指示が出た。上司に真意を確認したところ、確かに一理ある考え方だと納得できた。そこで、申し訳ないけどこういうふうに変更したい。」とみんなに言えないとね。「上から言われてるからこうしなさい」っていうのはダメなんだよ。「上司が言ってるから、本当は嫌なんだけどな」まで付け加える人がいるけど、要らないよ、ただの伝言係しかも不満付き。

死ぬときに「お前は駄目な奴だけど、まあお前なりには頑張れたんじゃないかな」と思える生き方じゃないとだめだと思うね。そういう人がゼミに来てるんだと思ってる。

僕は自分を見つけた人が自分らしく生きる手助けをしているつもり。その人の心にないものを植え付けよという気はないんだよ。その人の心を引き出して、その人が本来どうしたいと思ってるかを考える。

羽利
小田垣塾をやっていて、塾生が小田垣さんとのセッションの中で気づいていかれるのを感じます。すぐ何かできるという、スキルやノウハウ、方法論を教えられている訳じゃないんですけど。
小田垣
心の持ちようを教えてるだけなんだよね。僕は仕事をしていてずっと楽しかったから、どうしたら楽しく仕事をできるようになるか、それも自己を押し殺してではなく。もちろん、いつもそうできるわけじゃないよ、環境もあるし、上司がものすごく高圧的なことも世の中にはあるし、僕もそういう事は経験してる。それでもクサらずに、自分らしさっていうのをどうやって保っていけるか。難しい状況がずっと続くっていう事もないし、悪いときもないといい時のありがたみも感じられないしね。
僕は困難というのは非常に重要だと思う。困難があるから人のありがたさも分かるし、困難は成長の糧。困難に巡り合ったら、「自分がどう変わるべきチャンスなんだろうな?」って。

とにかく逃げるんじゃなくて、どういう方法があって、どう克服するかっていうことに全精力を注がなくちゃいけない。

その時に僕が言う「いつもいろんなことに気をつけて見ている」ことが生きてくる。歴史の中にもヒントがあるし、人がやってることの中にもヒントがあるし、世の中にはヒントだらけだから、「あの手を使えばいいんだ」っていうのがわかるようになる。歴史や身の回りに起こっている事柄に興味を持ってないとアイデアが湧かない。困難を乗り越えやすくするためのアイデアがどうやったら生まれるかも説明してる。

それと、往々にしてありがちなのが、例えば僕が「自分の意思を仕事に表現しろ」と言ったとしたら、すべてを自分の思うままにしなくちゃいけないっていう風に思う人がいるけど、そうじゃない。

自分が一番したい最上位のことを大切にして、それ以外の枝葉末節は、多くの人が関わってるんだからその人たちの主体性に任せる。多少自分の思いに反することはあっても受け入れないと、多くの人と仕事をすることはできない。全部を思い通りにしようとすると、みんな指示待ちになっちゃう。リーダーっていうのは、皆の主体性に任せるということがある程度必要。そのためには清濁併せ呑まないといけないんだよ。きれいごとだけ言ってたらみんなが窒息しちゃう、やる気無くしちゃう。上に立てば立つほどそういう事が求められる。
僕はホンダにいるときはアクセル200パーセントくらい踏んでたけど、ケーヒンの社長になってから20パーセントしか踏んでなかったよ。社長は権限が強いからね。 会社の将来についてよく考えて、こうすべきと思ったことをビジョンとして打ち出したりしたけど、方向性は示しても具体論をあまり言っていない。言ってしまうとみんな考えなくなっちゃうしね。みんなの思いの上に乗っかって仕事をした。

羽利
ついつい自分の思いをみんなの思いと勘違いしてしまって…
小田垣
みんなの思いが同じ方向に向くように配慮した方がいい。会社のベクトルが人によってバラバラっていうのは困っちゃう。だから「何がしたい」っていうのを言わなくちゃいけない。ただ、思いは同じなんだけど、ディテールは任せる。
どこに向かって行くかは言って、「予算と時間はこう。やり方は君たちに任せるけど、行きたいのはあそこなんだよ」っていうのを言わなくちゃ。ディテールを押しつけるのはダメ。大体自分が現役だったころとは時代もやり方も変わってる可能性があるしね。
羽利
ついやってしまいがちですよね。
小田垣
僕はいつも武将に例えて言うんだけど。用もないのに最前線に出て敵を倒すっていう人もいるけど、武将はそのためにいるんじゃないんだよ。自分の部隊を最適に配置して、負けそうなときには前線に出ることもあるかもしれないけど、すぐにまた戻って全体が見渡せる丘から常に全軍の動きを見ていないといけない。先頭に立って戦う面白さみたいなものにはまってしまうと、いつの間にか自分のあたりだけは勝ってるけど周りは全部負けてるってことになりかねない。武器が変わって鉄砲になったのに刀抜いて「みんなで突っ込め」とか言ったら、みんな死んでしまう。

長く仕事していると、活かせるものはフィロソフィーしかなくて、ディテールは自分の持っているものは古いかもしれない。もちろん最新のディテールの勉強は必要だけど。
羽利
時代の進化をうまく取り入れていかないと、いくら戦おうと思っても無理ですよね。それを否定しても、時代の進化は止められないですから。
小田垣
進化は止められない、お客様の気持ちも変化していくし、製品もツールもすごく変化して行く。特にソフト領域はすさまじい速度で進化しているから、昔のやり方に固執してたら絶対うまくいかない。自分の周りで起きていること、自分の周りにあるものを注意して見ていないと、部下が言ったことを理解できなくなっちゃうよね。

だけど、相手はしょせん人間だから、その中にどんな時代にも通じるエッセンスはあるよね。ディテールは通じないけど、エッセンスは通じると思うんだよね。自分を浄化してエッセンスにできるかどうかなんだよね。

ディテールにこだわって「俺は昔それをやってみたけどダメだった」ってなりがちだけど、そうじゃなくてエッセンスだよね。自分の体験を浄化して、価値あるものは何かを常に考えないと。
例えば今はサービスの形態もどんどん変わってるよね。ネットとリアルの融合。アメリカみたいに国が広すぎてお店に行くのが大変ていうところはネットが有効だけど、日本はそんなに広くないから、ネットとリアルの融合っていうのをいかにうまくできるか。日本人は組み合わせで新しい形を生み出す能力が高いかもしれない。

平安時代は「和魂漢才」、明治維新の頃は「和魂洋才」で新しい価値を生み出してきた国だから。

羽利
エッセンスの中に自分を出すっていうのが一番大事ですよね。どんな仕事でも。
小田垣
そういうこと。それによって自分がいなかったら出来なかったものになっていくんだよ。
小田垣
こうやって考え方の遺伝子が拡散していくっていいよね。
羽利
私が小田垣塾を開きたいと思った理由は、ノウハウやスキルを教えるところは世の中にたくさんあると思いますが、精神や心、考え方、姿勢を学べる機会は意外と少ないと思ったからなんです。小田垣さんに出会った時点で、もう自己の可能性が拡大していると思います。私が小田垣さんに出会ったっていうのも奇跡に近い事だと思うんですけど・・・
小田垣
いや、出会うべくして出会ってるんだよ、人というのは。
羽利
心に長年温めていたことが、出会ったことで実現できました。
これから受講して下さる人が増えていくと思うのですが、以前、小田垣さんが「遺伝子」っておっしゃった 、その遺伝子を持った人を増やしてくいく、その一端を担うことができることが私はものすごく嬉しいんです。
小田垣
僕にとっても、大阪でもそういう遺伝子が残せるのがすごくうれしい。
羽利
会社の中で一生尊敬できる上司や先輩に恵まれるというのは人生が変わるくらいの大きなことだと思うけれど、そんな方に出会わない人も多いんですよね。ですから小田垣塾をその機会にしていただきたいんです。
小田垣
だから、出会ったことをなんらかの「絵」になるものにしたい。
羽利
人は変われますからね。
小田垣
なんで変われるかっていうと、自分の内にあるからだよ。その人の内にあるものを引き出そうとしてる…だから僕は触媒だよね、羽利さんが「カタリスト」って言ってるの、良い言葉だと思うんだけど、触媒なんだよね。その人の内にあるものに気づいて欲しいだけなんだよね。覚醒だよね。
羽利
『自分を生きている人を、ひとりでも多く』それを「小田垣塾」の使命とし、継続していきたいと思います。ありがとうございました。
メールでのお問い合わせはこちらから